【文楽観劇】令和7年1月3日 新版歌祭文 仮名手本忠臣蔵

 


令和7年1月3日 国立文楽劇場(大阪)
初春文楽公演初日の一演目「新版歌祭文」二演目「仮名手本忠臣蔵」を鑑賞した。
この日は浄瑠璃人形による鏡割りと振る舞い酒が行われており
先着順で木枡ももらえるということで長蛇の列だった。
私は何も知らずその列に並んでいたが、係員に話を聞いて列を離脱し普通に入場した。
体調不良でお酒が飲めなかったし、木枡を入れる袋も用意していなかったからだ。
来年はあの列に並んでみよう、と思いながら入場。
ロビーには十日戎の神輿や鏡餅など新春の飾りつけがされており華やいでいた。
お客様も普段着、よそゆきの洋装、お着物、バックパッカー風の外国人など種々様々で
外国の人は道を譲る際にちょこんと会釈したりしてしぐさがとても日本風で、全くその場に馴染んでいた。
私もできればお着物を着たかったが、
今回弾丸日帰りツアーだったのと、体調が100%でなく着付けする気力体力ともなかったので諦めた。

この日私はいくつかのやらかしをするのだが
その一つ目、発券機中断事件。
QRコードがなかなか読み取れず、やっと画面が進んだと思ったら
途中でエラー画面が…私のせいではないのだが…後列から悲鳴が上がった。
開演が刻一刻と迫っているのに長蛇の列だったからだ。
何かのボタンを押したらすぐに戻った。よかった。
パンフを買い、トイレを済ませて2階へ。

舞台の上には「巳」の字が書かれたものと、向かい合った鯛(にらみ鯛というらしい)が飾られていた。
開演15分前、一体の人形が出て踊りを披露していた。多分新春特別のやつだろう。
そして三種類の緞帳の披露と説明が続く。
お正月らしく、たいへん御目出度い雰囲気。
初日に来てよかった…と感じた時間だった。
席は後方だがど真ん中。この選択が後に問題を引き起こす…

私の右隣りの二人組のおばさまが開演ぎりぎりまで世間話をしていた。
おば1がおば2に「きんとん作ってん」とタッパーを渡す。
おば1はこの日、嫁と孫が来るのが鬱陶しいので「文楽に行く」と言い残し家を出たらしい。
嫁と孫の悪口が続く。
「~とう」という語尾だったので兵庫の人だとわかった。
大阪は怖い、大阪は怖いとずっと言っていた。ここ大阪なのに…
おば2は友人のようだった。ふたりとも普段着の防寒着だ。
ワクワク感を削がされた私は「このおばさま方に文楽が理解できるのか?」と失礼なことを思った。
でもそれは私の傲慢だった。
緞帳が上がるとピタッとお喋りをやめてくれた(そのギリギリまで話していたけど)
おばさまは「新版歌祭文」の笑う所では笑い、感動する所では涙していた。
ちゃんと話を理解しているということは常連さんなのだろう、
兵庫からふらっと来て、
文楽を特別なものとしてではなく普通に楽しめているところ、
嫁孫の来訪を避けきんとんをタッパーに詰めて友達とお出かけする先が文楽という粋さ、
なんだか素晴らしいし、うらやましいと思い直した。
見た目後期高齢者。私もそんないけずなババアになりたいと思った。

やらかし二つ目。
新版歌祭文・野崎村の段の途中で私は咳が止まらなくなり
いったん退場してしまった。
隣のおばさま、その列の席の人ごめんなさい。
いつもの高熱の後の咳喘息でアレルギー発作なので
人にはうつらないのだが、知らない人からみたらアカンやつだよな…
周りの人は「なんで風邪ひいたのに来たんだ!」と怒り心頭なことでしょう。
言葉より咳が勝ってしまうので退場の際「すみません」もろくに言えず。
ロビーで涙を流して咳にむせる私に係員の人が心配になって来てくれたが
アレルギーなので人にはうつらないから大丈夫、と言うのが精いっぱいだった。
そんな私に優しくしてくれたのは、ロビーに設置されていたモニターだった。
むせながらも舞台の続きを観ることができたのだ。
ほんとうにごめんなさい。でもコロナでもインフルでも風邪でもないので安心して!
次から席は通路側を予約します。
(発作前後は静かに鑑賞できました)

第一部 新版歌祭文 11時から1時40分
第二部 仮名手本忠臣蔵 2時15分から4時55分
一部と二部の間にロビーで昼食。
パンなど持ち込みの人もいるけど、ここはやはり縁起物として劇場の文らく弁当。

「新版歌祭文」はざっくり言うと男女の三角関係に悪党が絡んでくる話、
「仮名手本忠臣蔵」は言わずもがな赤穂事件という実際に起こった事件がベースの話。
二部の仮名手本忠臣蔵は、元ネタの赤穂事件から
時代も登場人物の名前も変更しストーリーも創作が多いものだけど
私は忠臣蔵の話がなぜか昔から苦手で
(忠義の精神性が戦争とか諍い事に利用されそうなところがイヤなのかも)
いちおう話は頭に入れてきたものの不安なこともあり
イヤホンガイドを借りることにした。
このガイドが素晴らしくて、なぜ今まで使わなかったのかと後悔するほどだった。
舞台には字幕があるのだが、字幕ばかり追っていると人形の見せ場を逃してしまう。
ガイドはちょうどいい塩梅で解説したり補足したりしてくれるのでありがたかった。
イヤホンから目の前の舞台の音が聞こえてくるので、生で配信しているようだった。
仮名手本忠臣蔵は歌舞伎浄瑠璃の三大名作の一つで大人気演目。
ガイドのおかげでその人気も理解できた。大変に面白かった。
特に山科閑居の段は圧巻だった。
前の雪転しの段がこの段で鮮やかに生きてくる大変ドラマチックな演出もある。
現代的に考えると「最初から本音を言えば誤解ないのに…」と身も蓋もない気持ちが押し寄せるが
それだと畳みかける展開によって繰り広げられる当時の人々の美学や心の在り方は表現できない。
イヤホンガイドのおかげでしっかりと堪能することができた。
私が懸念していた「仇討ちという名の人殺し美化」なんて浅いものではなく
「忠義にならでは捨てぬ命、子ゆゑに捨つる親心」の詞が表すように
子を思う親の気持ちと過去の過ちの悔いが見事に絡まった素晴らしい段であった。
このイヤホンガイド、事前予約することができて100円引きになるらしい。
次回は絶対に予約していこう。

余談だが文楽には観客を楽しませるためのエロ要素も盛り込まれており
道行旅路の嫁入ではイヤホン解説者が
「とても言えません」と何度も繰り返していたセリフ(詞)がある。
そう言われるとよけい気になり調べたその言葉は「紫色雁高我開令入給」。
きわどい、というかあからさまな表現。何か平安時代の和歌を詠んだような気持ちに…ならないか。

5時30分から第三部「本朝廿四孝」が続いたが
弾丸のため、1階ロビーのお茶会を後ろ目に帰路に就いた。
新春てぬぐいプレゼントの抽選を確認するのを忘れた…残念。
朝8時に家を出て2演目鑑賞し夜8時に帰宅という弾丸ツアー終了。
本当はもっと訪れたい場所があったけど
(kinf of kingsという1970年創業の喫茶店など!)
次回の楽しみにとっておこう。


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