American Fiction/Mad Max: Fury Road/Dunkirk/Jojo Rabbit

 



American Fiction(2023)

邦題:アメリカン・フィクション

監督:コード・ジェファーソン

配給:Amazon MGMスタジオ・ディストリビューション

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『こういうのが欲しいんでしょ?』


小説家セロニアス”モンク”エリソンは大学で南部アメリカ文学を講義中、生徒に「差別的な言葉(Nワード)は聞きたくない」と抗議を受け、学校から長期休暇を言い渡され実家に帰省する。久しぶりに婦人科医の妹と再会するも妹は心臓発作で急死してしまう。それまで妹が面倒をみていた老いた母には痴呆症状が出始めており、モンクは母を預ける施設探しに奔走する。巷では”人々が想像する黒人像”を描いたシンタラ・ゴールデンの本が話題沸騰だった。精神的にも経済的にも追い詰められたモンクはやけくそで”世間が求める””典型的な”ゲットーの黒人小説を書く。エージェントに送るとその本は大ベストセラーになってしまった。


【私のような視聴者も悪い、でもエンタメ界も悪い】

「プレシャス Precious」という2009年公開の映画がある。

かなりふっくらした10代の黒人少女が主人公で、

貧困や性虐待など悲惨な過去を乗り越え希望を見出す…といった物語だ。

想像しやすい、提供され続けてきた、「貧困黒人のイメージ」満載の映画だった。

観た当時は主人公のあまりの悲惨な境遇に胸を痛めたが、

実は原作者サファイアは悲惨な境遇からは遠い、

大学で修士号を取得するほど成功した高学歴の黒人女性ということを今回知った。

まるで「アメリカン・フィクション」に登場するシンタラのような女性である。


騙されてごめんなさい。


私はブラックミュージックが好きなので、自然な流れで黒人が抱える問題に興味を持ち映画を観て来た。

カラー・パープル、マルコムX、シャフト、ジャッキーブラウン、アラバマ物語、

遠い夜明け←これは南アのアパルトヘイトの映画

12 Years a Slave、風と共に去りぬ、ムーンライト、、、等々。

スパイク・リー監督作品「Do the right thing」に出てくる町のラジオ局がやりたくて

放送系の学校に行ったくらいだ(入学後に電波法で海賊放送が違法だと知る)。

最近ではジョーダン・ピール作品も大好きだし、

MadTVやサタデーナイトライブの人種差別ジョークも大好きだ。

Netflixを契約した理由は「ストレイト・アウタ・コンプトン」が観たかったからだ。


騙されてごめんなさい。でも

こういうのをさんざん提供してきたのがおたくらエンタメ界でしょ?

「アメリカン・フィクション」でいやいやいやそういうのtypicalでboringですよと言われても。

…というのが本音だが、本作はコメディということもあり楽しく観た。


主人公モンクの家族は全員医者というアッパーミドルクラス。

ゲットーのギャング生活とは程遠く、実家とは別にビーチハウスまで所有しているお金持ち。

それなのに、自業自得とはいえ貧困層のギャングみたいな喋り方をする羽目になったモンク。

モンクが電話口で嫌々脱獄犯のふりをするシーン、

映画製作者と会う流れで、エージェントに「ワルっぽい」服装で来いと言われて

上品カジュアルで来てしまったシーン、

パトカーのサイレンを聞いて逃げ出してしまうという脱獄犯ぽい行動をとってしまったけど

実は認知症の母親が心配で探しに行ったシーン…など、

笑える場面が盛りだくさんなのだが

問題提起はしっかりされており、

黒人の人たちが抱える問題をテーマにした映画が次に進む

新しい1ページが開いたような作品だと感じた。



【求めるものと求められるもの】

・モンクのやけくそ小説を気に入ったポーラの出版社オフィスに飾られている絵画は

”RBG”ルース・ベイダー・ギンズバーグというユダヤ系女性のヒーローだ。

そっち(女性の権利向上)には意識がいくのに、ワル口調の電話口から垣間見えるモンクの上品さや教養はスルー(というか、売れればそんなのどうでもいいのかもしれない)の様子は、共存社会のややこしさが垣間見えたシーンだ。


・シンタラの本「WE'S LIVES IN DA GHETTO」のタイトルは黒人風に崩した文法で

表紙は電線にぶら下がったスニーカー(麻薬がある場所を示すサイン)だ。

恵まれた高学歴の黒人女性作家シンタラは

「あんたたち世間はこういうのが欲しいんでしょ?」といわんばかりに

戦略的マーケティング的に、確信犯的にこの本を書いた。

モンクから見たら魂を売り払ったようなゴミ小説のシンタラの本だが

彼女は十分なリサーチと取材に基づいておりストーリーには魂があると断言する。


本が売れれば出版業界は潤う。「欲しいイメージ」を得られた世間は満足する。

作家は名声と収入を得る。Win-Winじゃないか。嘘は書いていない。何がいけないのか。それが彼女の信条だ。

対してそれで本当にいいのだろうか、、、という問いかけがモンクのモヤモヤだった。


モヤモヤしているモンクを突き刺すように現れたのが

マミー・クラークの心理実験「ドールテスト」の写真だった。


モンクのモヤモヤはイコールこの映画の主題だ。

「黒人のステレオタイプなイメージ、現実とは違うからもうやめない?」

「経済社会の中で高いクリエイティヴィティが真っ当に評価されるにはどうしたらいい?」


【小ネタがいっぱい】

・嘘小説の著者名の元ネタが「スタッガー・リー」

・妹のブラックジョークが「ロー&ウェイド」

・妹の病院がボストン家族計画(原作ではここの医師という理由で殺されるらしい)

・兄が間違われるというタイラー・ペリー(ラストで回収)

・乗車拒否のシーン(差別ってなくならないよね、とサラリと説明。警官や施設職員のようなエッセンシャルワーカーが有色人種なのも対比的に表現)

他にもあるけどキリがないのでこれくらいで。


小ネタではないけど

妹役トレイシー・エリス・ロスはダイアナ・ロスの娘。


映画のサントラ、挿入歌ともにとても良かった。DJでかけました。


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Mad Max: Fury Road(2015)

邦題:マッドマックス怒りのデスロード

監督:ジョージ・ミラー

オーストラリア・アメリカ映画


【ずっとドンドコ鳴ってずっと走っている】

フェミニズム的作品と話題だったのは知っていたけど

自分の好きな映画でもなさそうだし…でも

いつか観なきゃな~なんて後回しにしていたら

新作「マッドマックス:フュリオサ」が公開されたので慌てて観た。

面白かった…面白すぎた!

ゲームのような映画だと思った。

ずっとドンドコ音が鳴り続けているし、登場人物はずっと走っているし。

途中で「いや帰るんかい!」という折り返し地点はあるものの

複雑なストーリーはなく設定のみ、キャラクターありきで

最初から最後まで観客のアドレナリンを噴出させ続け爆走する映画。


シャーリーズ・セロンが最高に格好いいのは言うまでもないが

何と言ってもヴィラン側のコスチュームデザインが素晴らしいのではなかろうか。

イモータン・ジョーとその息子たち、人食い男爵、武器将軍、

そしてギターマン…笑!

もう馬鹿みたいに最高すぎるこの世界線よ。なんでもっと早く観なかったのか私。


私的にはフュリオサかっこいい!になると予想していたけど

この話の軸はイノセントで振り切ったバカ:ニュークス vs 邪悪でケチで小心者:イモータン・ジョー、かなやっぱり。

マッドマックスならぬマッドニュークス。死んじゃったけど。


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Dunkirk(2017)

邦題:ダンケルク

監督:クリストファー・ノーラン

イギリス・オランダ・フランス・アメリカ合作映画


不協和音と高鳴る心臓音のような効果音、

船や戦闘機、これCGじゃなくね?本物?

クリストファー・ノーラン?

この大アクションカメラ、ホイテ・ヴァン・ホイテマ?

…と気づくくらいには私は「テネット」を観まくった。


隠れる所がない広い浜で、ドイツ軍が陸空海の3方向から攻撃してくる中、

イギリスが取った救出作戦は…


日本軍はガダルカナル島やサイパン島や沖縄を見捨てたけど

イギリス軍は約33万8千人の兵士撤退救出を成功させた。

兵士という人的資源の重要さを理解していたからだ。


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Jojo Rabbit(2019)

邦題:ジョジョ・ラビット

監督:タイカ・ワイティティ

アメリカ映画


題材が題材なだけに、これをコメディとして消化(視聴)してしまってもいいものか。

…と不安を感じながら観進めて行ったけど大丈夫だった。

主人公のイマジナリーフレンドがヒトラーという奇想奇天烈設定だが

ナチスは実際に青少年育成部隊「ヒトラーユーゲント」を組織化し

少年少女を洗脳しながら訓練していたので、この設定はアリかもしれない。

ユダヤ系であるタイカ・ワイティティは自分がヒトラーを演じることが反ナチスそのものだと語っていた。

10歳のドイツ人少年から見た当時の景色。憧憬からの残酷な現実。

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