関心領域 The Zone of Interest

 映画備忘録

2024年度後半に観た映画

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Anatomie d'une chute(2023)

邦題:落下の解剖学

監督:Justine Triet

フランス映画

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Beau Is Afraid(2023)

邦題:ボーはおそれている

監督:Ari Aster

アメリカ映画

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あんのこと(2024)

監督:入江 悠

日本映画

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推しの子

実写1-6話(2024)

アニメ第1-5章(2023)

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エゴイスト(2022)

監督:松永大司

日本映画

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The Zone of Interest(2023)

邦題:関心領域

監督:Jonathan Glazer

アメリカ・イギリス・ポーランド共作映画




【関心領域】

この家族の主婦が丹精こめて作り上げたのは

花や野菜が育ち、養蜂までできる広くて美しい庭。

ワンちゃんも飼っていて、滑り台付きプールもある

その邸宅はカヌー漕ぎやピクニックができる自然に囲まれた土地に建つ。

いつか私も住んでみたいと思うような素晴らしいマイホームだ。

隣接された施設がアウシュビッツ収容所でなければ。


ミッドサマーと同じA24制作。

この映画の主人公は実在したナチス将校ルドルフ・ヘス。

その妻のヘートヴィヒ・ヘス役はザンドラ・ヒュラーだ。

ザンドラ・ヒュラー、「落下の解剖学」では主役サンドラを演じている。

彼女は同時期に2つの映画に出演し、どちらも高い評価を受けた。

「落下の解剖学」では、フランスの田舎で

居心地の悪さを感じながら暮らす同じくドイツ人の役だった。

「関心領域」のヘートヴィヒは自分に都合のよい現実しか見ない粗野な主婦であり

おそらく教養を身に着けず裕福な暮らしだけを目標に生きてきた

下層階級出身の身分であろうことが見ていてわかる。

(後で色々解説を見たら、ヘートヴィヒはガチのフェルキッシュ思想を持つナチだった)


彼女の恐ろしいほどの無関心ぶり。

あの家で暮らすということは

きっと臭いもすごかっただろうし、空気もすごかったに違いない。

(彼女の母親が遊びに来た時、咳込んでいた)

なによりあの音の中で24時間暮らせているのが恐ろしい。

いや本当は無関心なのではない、

自分が何をしているのかは承知の上で生活している。

自覚的である。

冒頭からラストまで吐きそうな映画だ。


30年前、私が通っていた専門学校は高田馬場にあったが

科目によっては西新宿にある別校舎に移動する必要があった。

新宿西口から新宿中央公園まで続くトンネルのような通路を

通学路にしていた。

そのトンネルのような通路に等間隔で

ホームレスが段ボールハウスを作って住んでいた。

通路は尿の臭いというか何とも言えない独特の臭いがした。

そこを通るたびに「なぜ私は彼らではないのだろう?」という

答えのない疑問が頭に浮かんでいた。


なぜ私はアウシュビッツでガス室に送られたユダヤ人じゃないんだろう、

なぜ私は江戸時代の貧農から売られた女郎じゃないんだろう、

なぜ私はアフリカ大陸から劣悪な環境の中輸送船で死んでしまった黒人じゃないんだろう、

なぜ私は薩摩藩に搾取された奄美大島のヤンチュじゃないんだろう、

なぜ私は1970年代に虐殺されたカンボジア市民じゃないんだろう、

なぜ私は2022年のウクライナ人じゃないんだろう、

なぜ私は現在のパレスチナ人じゃないんだろう、

なぜ私は彼らじゃないんだろう、


暗澹たる気持ちになる。

けれど、安全圏で一時そんなことを考えてはすぐに忘れ日常に戻る私は

傲慢で残酷だ。ヘートヴィヒを非難する資格はないし嫌悪感を持つ資格すらない。


この映画では

ネガポジ反転でリンゴを土に置く少女が登場する。

この少女も実在するポーランド人ということだ。

少女が光っているような映像表現が素晴らしかった。

私は何度生まれ変わってもこの少女のような高徳さを身に着けられないだろう。

それでも何かを思い、

もしかしたらヘートヴィヒと自分は同じことをしているのではないかという危機感を持ちながら

自分にできる行動をし、自分が良しとする生き方をするしかない。

正しいかどうかを考えても意味がない。

正義や善悪なんて

ちっぽけで醜い人間の、人間のための裁量でしかない事だから。


関心を持つ、共感する、想像する、思考する、

「関心領域」はどれもが抜け落ちたいびつな家族を

まるでドキュメンタリーのように撮った映画だ。


答えが出ないことを安易に答えを出さずずっと考え続けることは

人生でとても必要なことなのだと感じた。

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